フリーランスの節税対策の一つが所得控除です。経費をなるべく計上することがもっとも大きな節税対策と言えますが、次に挙がってくるのが所得控除です。そこで、所得控除にはどのような種類があるのか、それぞれの内容はどうなっているのか、といったことを解説します。
所得控除の種類
所得控除の種類は全部で14種類あります。青色申告特別控除も含めると15種類です。先に箇条書きで挙げておくと、以下のものです。
- 基礎控除
- 医療費控除
- 雑損控除
- 寄附金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 障害者控除
- 寡婦控除(寡夫控除)
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 青色申告特別控除
以上のようになります。
各所得控除の内容
基礎控除
控除金額:38万円
基礎控除は無条件で使えるもので、一律38万円です。1995年に35万円から38万円に変更されているため、今後金額が変更される可能性もあります。
医療費控除
控除金額:医療費の合計金額 - 保険金などの補助金額 - 10万円または所得の5%(どちらか多い方)
医療費すべてを控除対象にできるわけではなく、10万円を超えている部分で、なおかつそのうちの一部になります。また病気や怪我の治療ではなく、美容目的や健康診断は控除対象の医療費には含まれません。
雑損控除
控除金額:損害金額の合計 + 関連した必要支出の金額 - 保険金などの補助金額 - 総所得金額の10%
具体例:
(所得)500万円
(損害金額の合計)100万円
(関連した必要支出の金額)20万円
(保険金)50万円
100万円 + 20万円 - 50万円 - (500万円 × 10%) = 20万円
雑損所得は自然災害も盗難も横領も対象ですが、詐欺や恐喝は含まれません。
寄附金控除
控除金額:寄附金額(所得の40%が上限) - 2,000円
国、地方公共団体、特定公益増進法人などへの寄附が控除対象になりますが、最近は「ふるさと納税」が特に注目されています。ふるさと納税は寄附金控除の対象なので、節税も兼ねてふるさと納税を行っている方も多いでしょう。
生命保険料控除
控除金額:加入時期や保険料、保険の種類によって異なる
控除金額の詳しい計算方法は以下です。
年間の支払保険料等 | 控除金額 |
2012年1月1日以降に契約した場合 | |
2万円以下 | 支払保険料等の金額 |
2万円超~4万円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 1万円 |
4万円超~8万円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
2011年12月31日までに契約した場合 | |
2万5千円以下 | 支払保険料等の金額 |
2万5千円超~5万円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 1万2,500円 |
5万円超~10万円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 2万5千円 |
10万円超 | 一律5万円 |
地震保険料控除
控除金額:支払金額全額(上限5万円)
火災保険は地震保険とは別ですが、地震が原因の火災保険は対象となります。
社会保険料控除
控除金額:その年に支払った金額全額
社会保険とは、健康保険、国民健康保険、厚生年金、介護保険、雇用保険、などを指します。保険の中でも支払いが強制されているものです。また保険の年度ごとに控除対象になるのではなく、支払った年度ごとに控除対象となります。
たとえば2020年の保険料を2019年に支払った場合、2019年の控除対象になります。
小規模企業共済等掛金控除
控除金額:支払金額全額
小規模企業共済の加入は任意ですが、全額所得控除の対象になることも魅力の一つです。
障害者控除
控除金額:
[障害者]27万円
[特別障害者]40万円
[同居特別障害者]75万円
身体障害、精神障害の両方を含みます。また扶養対象者が障害者の場合、扶養控除と障害者控除の両方を受けられます。
寡婦控除(寡夫控除)
控除金額:27万円または35万円
以下の条件をすべて満たすと、特定寡婦(特定寡夫)と見なされ、控除金額は35万円になります。
勤労学生控除
控除金額:27万円
基礎控除(38万円)と合わせると、65万円です。つまり、勤労学生控除を受けると必ず税金は0円になります。
配偶者控除
控除金額:38万円(配偶者が12月31日時点で70歳以上の場合、48万円)
所得がない人は基礎控除を受けられないため、それを代わりに配偶者が受ける趣旨の制度です。
配偶者特別控除
控除金額:配偶者の所得に応じて段階的に変動する
配偶者控除を受けられない場合でも、所得に応じて段階的に配偶者特別控除を受けることができます。具体的な金額は以下のようになります。
配偶者の合計所得金額 | 配偶者特別控除の控除額 |
38万円超40万円未満 | 38万円 |
40万円以上45万円未満 | 36万円 |
45万円以上50万円未満 | 31万円 |
50万円以上55万円未満 | 26万円 |
55万円以上60万円未満 | 21万円 |
60万円以上65万円未満 | 16万円 |
65万円以上70万円未満 | 11万円 |
70万円以上75万円未満 | 6万円 |
75万円以上76万円未満 | 3万円 |
76万円以上 | 0円 |
扶養控除
控除金額:扶養される側の年齢、障害者かどうかなどによって変動する
詳細は以下の表のようになります。
年齢 | 扶養控除額 | 同居特別障害者の扶養控除額 | |
16歳以上19歳未満または23歳以上70歳未満 | 38万円 | 73万円 | |
19歳以上23歳未満 | 63万円 | 98万円 | |
70歳以上 | 同居老親等以外の人 | 48万円 | 83万円 |
同居老親等の人 (自分か配偶者の父母、祖父母で同居している人) |
58万円 | 93万円 |
同居かどうかの基準としては、たとえば老人ホームに入居しているような場合は同居に該当しません。しかし病気の治療目的などで長期入院しているケースでは、同居と見なされます。
青色申告特別控除
控除金額:10万円、もしくは65万円
65万円控除の方は「複式簿記での貸借対照表」が必要です。一方で、10万円控除の方は「簡易簿記」で済みます。簡易簿記なら白色申告する場合と手間がさほど変わりません。
日々の帳簿付けや確定申告は会計ソフトを使った方が楽
帳簿作成や確定申告をエクセルで乗り切ることは不可能ではありません。しかし単純に時間と労力がかかりミスする確率も高くなるでしょう。かけるコストに対して得られるメリットが大きいので、フリーランスの方の多くは会計ソフトを導入しているはずです。
特にクラウドタイプがおすすめで、たとえば今回の控除に法改正があったとしても、自動的にアップデートされます。出先からスマホで経費入力することも簡単なので、非常に便利です。会計ソフトについて詳しくは以下の記事で紹介しているので、導入を検討されている方はぜひご確認ください。