フリーランスが知っておくべき税金の種類とその計算方法について解説します。基本的には日々の帳簿付けと確定申告書類についてある程度把握しておけば、細かい計算は会計ソフトでできます。そのため会計ソフトに任せれば良いのですが、会計ソフトがどのような計算を行っているのか、支払わなければならない税金の内訳はどうなっているのか、といったことについてある程度は理解しておいた方が良いです。
ただしすべてをきっちり理解していなくても確定申告自体はできるので、税金の種類の大枠と計算方法の概要を捉えるイメージで読み進めてください。
フリーランスが支払う税金の種類
フリーランスが支払う税金は大きく分けて4種類あります。ただしすべてのフリーランスが4種類すべての税金を支払うわけではなく、必要なもののみ支払います。4種類の税金は以下です。
- 所得税
- 住民税
- 個人事業税
- 消費税
自分で計算する必要があるのは「所得税」と「消費税」ですが、消費税は支払義務のない方が多いかと思います。条件等の詳細は後述しますが、結果的にもっともフリーランスが意識して納税や節税すべき税金は所得税です。
各税金がかかる条件とその計算方法など
所得税がかかる条件とその計算方法
所得税がかかる条件は以下です。
- 年間所得金額が38万円を超える場合(副業の場合は20万円を超える場合)
ほとんどのフリーランスの方は年間所得金額38万円は超えているかと思うので、所得税を納税する義務があります。この38万円という金額は基礎控除金額と同じで、38万円以下ならすべて控除される形になります。
また適用税率は5%~45%の7段階、控除額は0円~479万6,000円までの7段階です。計算式は以下のようになります。
所得税額 = 課税所得金額 × 適用税率 - 控除額
課税所得金額とは、課税対象になる所得のことです。収入から経費と控除分を引いた金額が課税所得金額です。次に課税所得金額に税率をかけ、そこから控除額を引きます。最終的に所得税額が算出されます。適用税率はと控除額は課税所得金額に応じて変動し、詳細は以下の表です。
課税所得金額 | 適用税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超、695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円超、900万円以下 | 23% | 63万6,000円 |
900万円超、1,8000万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円超、4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
たとえば課税所得金額が500万円なら、計算式は以下のようになります。
57万2500円 = 500万円 × 20% - 42万7,500円
ちなみに控除額は計算式を簡略化するための数字です。控除額なしで計算することも可能で、上の例だと以下のようになります。
57万2500円 = 195万円 × 5% + (330万円 - 195万円) × 10% + (500万円 - 330万円) × 20%
本来は課税所得の金額の中で、金額ごとに区切って税率をかける必要があります。最初の195万円は5%、次の135万円は10%、といった形で計算していくのですが、これだと計算が面倒になります。
そこで控除額をあらかじめ設け、課税所得金額全体に税率をかけ、控除額を引くだけで計算できるようにしています。
住民税がかかる条件とその計算方法
住民税は、毎年1月1日時点で自身が居住する自治体(都道府県、市町村)に支払う税金です。住民税は所得に基づいて請求されるため、自分で計算する必要はありません。自治体によりますが、所得が35万円程度以下、生活保護を受けている、などの条件を満たすと非課税になります。
所得税同様、普通にフリーランスとして活動していれば住民税も支払うことになるでしょう。住民税は自分で計算しないので詳しく知っておく必要はないのですが、一応解説しておきます。
住民税は、「所得割」と「均等割」で構成されています。所得割は、前年の所得金額に応じて課されます。均等割は一律に課されるものです。市町村民税と道府県民税の合計で、年度ごとに金額が変更される可能性があります。ただし過去数年と今後数年は市町村民税が3,500円、道府県民税が1,500円の合計5,000円で固定されています。
また均等割は金額が変更になったとしても、合計で4,000円~6,000円程度が目安です。勝手に請求書が届くので住民税を計算する必要はありませんが、以下の計算式を知っていると目安の住民税額がわかります。
所得割 = 所得金額 - 基礎控除(33万円) × 自治体が定めた税率(課税所得金額の10%が基本) - 税額控除
均等割(5,000円) = 市町村民税(3,500円) + 道府県民税(1,500円)
所得税の基礎控除は38万円でしたが、住民税の基礎控除は33万円となっています。
個人事業税がかかる条件とその計算方法
個人事業税は事業を行っている個人の所得金額に課税されるもので、都道府県に納める地方税です。またフリーランスの中でも個人事業税がかかる業種は70ありますが、たとえばライターやプログラマーなどは個人事業税がかかりません。
ライターやプログラマーも仕事内容によっては請負業と判断されて課税される可能性がありますが、多くの場合非課税で済むでしょう。また個人事業税がかかる業種であっても、自分で個人事業税のみを申告したり、税金を計算する必要はありません。
確定申告時に事業等を申告するので、税務署がそれを見て個人事業税がかかるかどうかを判断し、毎年8月のみか、8月と11月に納付書を送ってきます。計算する必要はありませんが、一応計算式を紹介しておくと以下のようになります。
事業税率については、事業によって3%~5%の税率になります。また事業主控除は290万円です。事業主控除をフルで受けるためには1年以上の営業期間が必要で、1年未満の場合月割りで計算して控除されます。
たとえば事業収入が600万円で経費が100万円、事業税率が5%だとすると以下のようになります。
600万円 - 100万円 – 290万円 × 5% = 11万5,000円
となります。安いというわけではありませんが、所得税に比べると少なくなるでしょう。
消費税がかかる条件とその計算方法
消費税の納付義務のあるフリーランス、法人を課税事業者と呼びます。そして課税事業者かどうかの基準は明確で、以下のようになります。
- 売上高が1,000万円以上(例外として、売上高が1,000万円以下であっても、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者になります)
- 開業から2年以上経過している
以上が課税事業者の条件です。また売上高という点がポイントで、経費や控除を引いた額ではありません。計算式は以下です。
[簡易課税]消費税 = 売上の消費税 - (売上の消費税 × みなし仕入税)
本則課税は基本の計算方法、簡易課税は売上が少ない場合に使えるみなし仕入率をあつかった計算方法です。消費税に関してはクライアントに請求するかどうかや細かい扱いの問題があるのですが、今回は税金の種類と大まかな計算方法の紹介なので、消費税の詳細については割愛させていただきます。
日々の帳簿付けや確定申告は会計ソフトを使うと便利
フリーランスが把握しておくべき税金の種類や計算方法を大まかに解説してきました。すべてを正確に把握するのは大変なので、ある程度把握しておいて、後は会計ソフトに任せるのがおすすめです。特にクラウド管理できる会計ソフトだと法改正に応じて自動的にバージョンアップされるので、すべて自分で把握していなくても計算して納めるべき税金を出してくれます。
エクセルなどでも計算はできますが、会計ソフトのように法律に従って税金計算をサポートしてくれるようなことはありません。会計ソフトを導入した方が簡単で、またフリーランスの多くは会計ソフトを導入しているはずです。
具体的におすすめの会計ソフトは限られていて、人気でユーザー数の多いソフトを使うのが無難です。詳細は以下の記事にまとめていますので、導入を検討されている方はご参考ください。