ほとんどのフリーランスにとってパソコンは必須アイテムで、特にプログラマーやライターの方は仕事時間中ほぼパソコンに向かって作業していることでしょう。パソコンがないとまったく仕事になりません。
もちろんすでにパソコンを持っているかと思いますが、スペックの高いパソコンに買い替えたい、万が一のときに作業が止まるのは困るので呼びを持っておきたい、といったことがあるかと思います。
そこで新たにパソコンを購入するわけですが、仕事に使うパソコンはもちろん経費にできます。ただし注意点があって、パソコンの値段、申告方法によって簿記上の扱いが変わってきます。このページでは、パソコンを購入した際の計上方法をわかりやすく解説します。
パソコンを経費にする際の基本の考え方
詳しくは後程説明しますが、まずは大前提となる考え方を解説します。パソコンを購入したら、以下の計算式で取得価額が決定されます。
取得価額 = 購入代価(一組単位) + 付随費用(送料や製品保証料など)
本体の価格だけでなく、送料などの付随費用も取得価額に含まれます。また消費税については普段どのように帳簿を付けているかにより、パソコン以外の経費に合わせることになります。次に購入代価についてですが、一組単位で考えます。
一組単位とは、たとえばモニターやマウスをセットで使用する目的で購入した場合、一単位として計上するということです。詳しくは後で解説しますが、価格が上がると消耗品費ではなく固定資産になります。消耗品費にするために、モニターやマウスを意図的に別計上するのはNGです。
パソコンを複数台購入した場合などは、別々に使用する場合は複数で計上し、クラスタ、マイニング等で一台として利用する場合は一つの項目で計上します。マウスやモニターをセットで購入する場合同様に、単価を下げるために意図的に分けて計上するのはNGです。
処理方法一覧
詳しい金額の条件は後述しますが、先に処理方法を表にまとめておきます。おすすめ順に上から並べています。
処理方法 | 勘定科目の例 | 内容 |
一括費用計上 | 消耗品費 | 通常の「消耗品費」として計上する |
少額減価償却資産の特例処理 | 消耗品費 | 全額その年の経費にできる |
一括償却資産処理 | 一括償却資産 | 固定資産として計上し、そこから3年間の均等償却を行う |
通常の減価償却処理 | 備品 | 固定資産として計上し、パソコンの場合は4~5年の減価償却を行う(原則は定額法) |
一括費用計上
特別な理由がなければ、まずは一括で「消耗品費」として費用計上できるかどうか検討することになるでしょう。その年に経費にしてしまった方が、その年の大きな節税効果につながるからです。
少額減価償却資産の特例処理
次に、少額減価償却資産の特例処理も一括で費用計上できます。金額の条件などは後ほど一覧表で説明しますが、青色申告でしか利用できません。10万円以上で消耗品費にできない金額であっても利用できる点が魅力です。
一括償却資産処理
一括償却資産処理は3年間の均等償却なので、通常の減価償却よりも早期に費用にできます。
通常の減価償却処理
最後に、通常の減価償却は4~5年かけて資産を償却していきます。原則は定額法なので、均等に資産を費用にしていきます。
金額や条件ごとの処理方法
上で処理方法を挙げましたが、次にそれぞれの処理方法が使える金額やその他の条件を表にまとめました。おすすめ順に左から並べています。
金額 | 一括費用計上 | 少額減価償却資産の特例処理 | 一括償却資産処理 | 通常の減価償却処理 |
10万円未満 | ○ | ○ 青色申告のみ |
○ | ○ |
10万円以上20万円未満 | × | ○ 青色申告のみ |
○ | ○ |
20万円以上30万円未満 | × | ○ 青色申告のみ |
× | ○ |
30万円以上 | × | × | × | ○ |
10万円未満
まず購入金額が10万円未満の場合、一括で「消耗品費」などで費用にするのが一般的です。これは白色申告でも青色申告でも同じです。
10万円以上20万円未満
次に10万円以上20万円未満の場合、青色申告なら少額減価償却資産の特例処理を使うのが良いでしょう。
「消耗品費」などの項目で、一括で費用計上できます。ただし白色申告では使えないので、その場合は一括償却資産処理を利用すると良いです。3年で償却するので、通常の減価償却処理よりは早くに費用化できます。
20万円以上30万円未満
20万円以上30万円未満の場合も、青色申告なら少額減価償却資産の特例処理を使えます。「消耗品費」などで一括費用計上するのが良いでしょう。白色申告の場合、使えるのは通常の減価償却処理だけです。20万円以上なので、一括償却資産処理は使えません。
30万円以上
30万円以上の場合、青色申告でも白色申告でも通常の減価償却処理を使うことになります。
まずは最低限必要な情報のみを押さえておく
経費計上のやり方が複数あって、なおかつ金額や申告方法によってやり方が変わるので混乱する、といった声はよく耳にします。またネットなどで情報を調べても、文章で細かく説明されているせいでかえって混乱してしまうこともあるでしょう。
そんなときは、このページで紹介した表のように最低限必要な情報をピックアップして頭の中で整理しておくのがおすすめです。このページの表のようなものがあればそれをそのまま把握しておけば良いですし、文章で読む場合も条件等を拾って頭の中で整理する必要があります。
今回の例では、金額、処理方法、勘定科目、条件、などが軸になっており、その軸ごとに情報を整理していくことが重要なのです。一度頭の中で情報を整理できれば、改めてより詳しい情報を見たときなどに頭の中でうまく整理できます。
骨組みを作って、そこに情報を整理しながら肉付けしていくイメージです。