IT業界はエンジニアだけで成り立っているわけではなく、営業、ヘルプデスク、マネージャーなども欠かせない存在です。そして、IT業界の中でも上流工程を担当し、優秀な人たちが集まると言われているのがITコンサルです。
私自身がITコンサルタントとして働いた経験はありませんが、SIerに在籍していた頃に外資系のITコンサル会社の方と関わることが多かったです。なぜなら大規模な業務システム開発だと一番最初にクライアントと接点を持つのはコンサル会社で、そこからSIerが開発を請け負うことが多いからです。
またSIerからそのコンサル会社に転職する人も何人かいました。そこでこのページでは、ITコンサルにプログラミングスキルは必要なのか、その他にはどのようなスキルが必要なのか、について解説します。
ITコンサルタントの3つの種類
スキルの前に、そもそもITコンサルタントがどのような役割を担っているのか解説します。ITコンサルタントの業務は多岐に渡りますが、大枠では「経営戦略策定」「システム導入」「プロジェクトマネジメント」などを行います。
つまりクライアント企業の課題等を洗い出し、それをシステムで解決する方法を提案し、実行に移します。システム開発自体は外部のIT企業に流すケースが多いため、開発フローで言えば最上流工程を担います。
これらの業務を行うためにITコンサルとは内部で三つの種類に分けられています。
- アナリスト(ビジネスアナリスト)
- コンサルタント(導入コンサルタント)
- マネージャー(プロジェクトマネージメントオフィス)
以上の三種類です。今回は職種紹介ではないので簡易的な解説に留めますが、以下がそれぞれの役割です。
アナリストの役割
アナリストはクライアントの課題を分析し、システムの導入効果や目標を設定します。顧客の問題を解決するための核となるポジションです。
コンサルタントの役割
コンサルタントはクライアントとの直接コミュニケーションを取る機会の多いポジションです。パッケージや、開発したシステムの導入、納品作業を担当します。
マネージャーの役割
ITコンサルでのマネージャーはPMOと呼ばれることが多いです。PMOと聞くと、エンジニアの方は特にPMの下に付いている「PMOアドミニストレータ」「PMOエキスパート」「PMOマネージャー」の三つを思い浮かべるかもしれません。
ITコンサルでのPMOもそれに似ているのですが、厳密には役割が異なります。プロジェクト管理、オフィス管理などを全般的に行います。ちなみに一般的なPMOについては以下の記事で解説しているので、興味のある方はご参照ください。
PMOとPMはどう違う?PMOの種類、役割、必要スキルを解説
プログラミングスキルが必要な役職
ITコンサルタントには主に三つの役職があると説明しました。そしてプログラミングスキルの重要度が高い順に並べると以下のようになります。
アナリスト > コンサルタント > マネージャー
それぞれの役割を考えると、おそらく想像しやすいかと思います。
アナリストに求められるプログラミングスキル
まずアナリストはクライアントの課題を洗い出す際にシステムも見ます。設計書やソースコードを見て理解できないと務まりません。
また分析結果を元にシステム要件を固めていくため、アナリストの作成した仕様に穴があるとその後の下流工程すべてにおいてバグの危険性をはらむことになります。エンジニアと同等か、それ以上のプログラミングスキルが求められます。
コンサルタントに求められるプログラミングスキル
次にコンサルタントはクライアントとの話し合いやシステムの導入作業を行うので、幅広いIT知識が求められます。直接プログラミングを行う機会は少ないものの、クライアントシステムの大枠は正確に理解しておく必要があります。
またクライアント側の担当者がエンジニアであるケースも多いため、エンジニアが専門的な話をした際に理解した上で下流工程に落とし込むことが求められます。
マネージャーに求められるプログラミングスキル
最後にマネージャーに関しては、直接的にソースコードに触れる機会は少ないでしょう。SIerのPMやPMOよりも少ないです。プロジェクト全体の予算管理や人員管理が主な役割です。とはいえシステム規模、必要人員、予算などを正確に見積もってプロジェクト計画を立てるためには、プログラミングの知識を持っていることが武器にはなります。
プログラミングの知識がないとその分アナリスト、コンサルタント、開発現場のエンジニアなどに質問したり、クライアントとの打ち合わせに同行してもらわなければならなくなるので、なるべくなら自分で考えられるくらいの知識は身に付けていた方が良いでしょう。
その他必要スキル
ITコンサルタントに必要なプログラミングスキルについて説明しましたが、ITコンサルタントに求められるスキルはプログラミングスキルだけではなく、むしろ他のスキルの方が重要です。具体的には、以下のようなスキルが求められます。
- コミュニケーションスキル
- 資料作成スキル
- 問題解決スキル
コミュニケーションスキル
ITコンサルタントはクライアントや開発メンバーと話し合い、プロジェクト全体を成功に収める責任を持ちます。ITコンサルタントのコミュニケーション能力が欠落していると、プロジェクトは前に進まなくなります。
また外資系企業は特にマニュアル通りに仕事を進めるわけではなく、自分で考えて行動し、なおかつその結果が評価されます。プレゼンにしても打ち合わせにしても資料作りから自分で考えてやる必要があるため、誰とどのようにコミュニケーションを取って、どうプロジェクトを動かしていくかも自分の裁量です。
年次の浅いうちから大きな裁量が与えられますが、その分コミュニケーションを中心に自発的に動くことが必須です。
また外資系であれば、英語力があると仕事の幅が広がります。
資料作成スキル
ITコンサルタントはソースコードを書くことは少ないのですが、資料作成は日常業務です。何をするにも根拠や目的をはっきりさせる必要があり、それを明確化するのは資料です。自分で作った資料をベースに自分の口から説明し、相手が納得することで初めてクライアントや社内の人が動きます。
ITコンサルタントは自分で何か作るわけではなくある意味人を動かす仕事ですが、人を動かすためには人が見てわかりやすく、納得できるだけの資料が求められるということです。特にITは細かくて口頭だけで人に伝えるのは難しいものなので、常に資料と口頭での説明がセットになります。
またITコンサルタントは結果に責任を持ちますが、資料が結果に対する証拠にもなるわけです。資料の作成はExcel、Word、PowerPointなどの基本ソフトを使うことがほとんどなので、ツールの扱い自体は特に難しくはないでしょう。
問題解決スキル
抽象的ではっきり言って曖昧なスキルではありますが、ITコンサルタントにとって問題を明確化して解決するスキルが何より大切です。スキルというだけでなく、思考回路、行動原理とも言えるでしょう。
ITコンサルタントの方と話した際に、「常に課題を挙げて解決策を考える癖が付いているから、プライベートでは困ることも多い。」といったことを話されていました。なぜそれが困るのかと尋ねると、「友人や身内とプライベートな会話をしているときにも、課題と解決策を提案したくなるから。」と話していました。
よく女性が男性に対して愚痴を言った際に、男性は女性の心情を察さずにアドバイスしようとする。ただ聞いてほしいだけなのに。といった話は度々耳にするかと思います。ITコンサルタントとして身に付けた問題解決スキルは、プライベートではむしろ問題を起こすこともあるようです。
口に出すかどうかは置いておいて、常に改題を挙げ、解決して価値を提供する思考は叩き込まれるそうです。私がSIerに在籍していた頃、ITコンサルタントのチームの席からは頻繁に「イシュー」「バリュー」といったワードが聞こえていました。
ITコンサルタントのバックグラウンド
ITコンサルタントは新卒の人もいれば転職の人もいます。しかし業界的に転職して在籍している人の方が多いでしょう。新卒でクライアントに対して価値を提供するのはハードルが高いからです。
そして転職前の職種、業種としては、SE、PMか別の別業種のコンサル会社が多いです。元SEの場合技術的なバックグラウンドがあり、特に業務系SEの場合はプログラミングだけでなくクライアントが求めている業務改善に関する知識も持っています。
PMまで経験していればプロジェクト全体を見渡して他者と連携していくスキルも身に付いているため、ITコンサルタントとして働くための土壌がある程度できている状態になっているでしょう。
次に別業種のコンサル会社から転職する人もいます。たとえば、戦略系や総合系のコンサル会社からの転職です。この場合ITスキル自体はそこまで高くないケースが多いのですが、コミュニケーションスキルや問題解決スキルが高いケースが多いです。
実際私自身、別のコンサル会社から転職してきてITスキルは高くないコンサルタントの方とやり取りした経験があります。しかし知識不足を補うだけのコミュニケーション能力や学習能力があり、社内での評価も高かったと思います。
ITコンサルタントはバックグラウンドが人それぞれで、何を武器にするのか、どのように仕事を進めるのかも本人たちの裁量によります。プログラミングスキルはITコンサルタントとしての一つの武器になりますが、プログラミングスキル以外にも重要なスキルは多々あります。
自分の強み、コンサルタントとしての価値を考えた上で、プログラミングスキルが武器になると判断すればプログラミングスキルを高めていくのが一つの戦略です。