SIerとSESの違いとは?定義や実態について図でわかりやすく解説

SIerとSESの違い

SIerとSESは混同されがちですが、明確な違いがあります。SIerとWEB業界、SESとWEB業界が違うことはわかるけれど、SIerとSESに違いがあるとは思えない、といった方も多いでしょう。

そこでこのぺージでは、SIerとSESの定義的な違い、実際のプロジェクトでの位置関係はどうなっているのか、などについて解説します。

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SIerとSESの定義上の違い

SIerとSESはそれぞれ以下の構造で成り立っています。

SIerとSESの構造

 

 

 

まずSIerは成果物に対して報酬が一括で支払われます。クライアント企業に対して、システム等を渡すことで報酬が発生するのです。一方で、SESはクライアント企業に技術者を派遣することで毎月報酬が発生します。

客先常駐型の働き方で、いわば労働力に対して対価が支払われています。物が完成するかどうかは報酬と直接的には関係ないのです。また派遣と言っても、派遣契約とは異なります。派遣契約は指揮命令権がクライアント企業にありますが、SES契約では指揮命令権はあくまでもSES企業にあります。

定義上の違いを簡単に説明すると以上のようになりますが、特にSIerかSESに所属されている方は、実態と違う、と感じられたかもしれません。これはあくまでも定義上の違いなので、必ずしも実態がこの通りになっているわけではありません。

SIerとSESの実態上の違い

定義上の違いを紹介しましたが、次に実態はどうなっているのかを解説します。まず最初に、以下の図を見てください。

IT業界の多重請負構造

 

 

よく問題視されている、IT業界の多重請負構造です。1次請け企業がクライアント企業から仕事を受け、それを2次請け、3次請けにどんどん流している構造です。そしてカッコ書きで各SIerとSESがどこに位置しているのかも記載しました。

見ての通り、SESはピラミッドの下層部に位置しています。1次請けの大手SIerや2次請けの中堅SIerはクライアントに成果物を納品することで報酬を得ていますが、一番下のSESは直接クライアントから報酬をもらっているわけではありません。

大手、中堅SIerから報酬をもらっており、その際には成果物ではなく、技術者を派遣することで「一人当たり月に何円」という人月単価というものを採用しています。ここで話が戻るのですが、中小SIerについても、上で説明した定義上ではSESのような報酬の得方をしています。

また同じ企業であっても、プロジェクトによっては孫請けでSES契約で報酬を得ていたり、他のプロジェクトでは1次請けでクライアント企業からSIer的に直接報酬をもらっていたりします。

つまり、実態としては完全にSIerとSESを分離できるわけではなく、ごちゃ混ぜになっている企業も多いということです。とはいえ企業によってSIer的にクライアント企業から直接報酬を得ているプロジェクトが多いか、SES契約で下請けで参加しているプロジェクトが多いか、といった違いはあります。

実態としては必ずしも明確になっているわけではありませんが、定義上の違いを知っておくことで企業選びの基準にはなるでしょう。

現場のエンジニアの認識

SIerとSESの定義、実態について解説しました。客観的な話でしたが、現場のエンジニアたちはどのように考えているのでしょうか。私自身はSIerに在籍していた経験がありますが、現場ではSIerとSESの違いについて認識している方は少数派かと思います。

自分の在籍している企業がSIerなのかSESなのかわからない、そもそもSESを知らないという方も多いでしょう。SIerは知っているはずなので、実際はSES契約が主体の会社であっても、在籍しているエンジニアはSIerと認識しているケースが多いということです。

定義と実態を知って臨機応変に考える

ネット上でも、「SIerの多重請負構造」「SIerの客先常駐」「SIerの人売りビジネス」などSIerで一括りにされているケースが多いです。定義上厳密にはSESであっても、SIerとしてまとめられていることが多いため、情報収集などを行う際には注意が必要でしょう。

逆にSIerとSESの違いをきっちり分けて解説されているケースもあるので、SIerで一括りにして認識していると混乱することが予測されます。このページで解説した内容をなんとなくでも頭の片隅に置いておいておけば、以降SIerやSESの話が出てきた際に、「今回はSESもSIerで一括りにして説明しているな」「SIerとSESを分けて説明しているな」と腑に落ちるはずです。

IT業界では言葉の定義と実態が微妙にずれているケースは多々あります。すべて定義のままに考えると、たとえば「プログラマーの求人なのにシステムエンジニアの仕事内容みたい」などと感じることがあるでしょう。

人や企業によって用語の使い方がバラバラだったりもするので、用語の定義をある程度押さえつつも、臨機応変に考えるようにしてください。

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